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特別教室84 卜部直也「真鶴町の美の基準」レポート

[講師]
卜部直也(真鶴町役場)

[講義内容]

旧三福を会場に開催した5月の特別教室。今回のテーマは「真鶴町の美の基準」。真鶴町役場職員で美の条例の運用を10年間担当した卜部(うらべ)直也さんをゲストにお迎えしました。当日は、真鶴に住んでいる人、これから住みたい人、別の自治体の職員さん、まちづくりに携わる人などでいっぱい。卜部さんの入庁の経緯、美の基準のなりたち、「美の基準」の実際の運用方法などをお話いただきました。真鶴と「美の基準」の魅力にたくさん触れた2時間でした。

卜部さんの美の基準にはふせんや書き込みがびっしり。

2時間のお話のなかで一番印象的だったのは、とても抽象的な「美の基準」をどんなふうに実際の建物やまちなみづくりに適用しているのか、というお話でした。美の基準がどれくらい抽象的かと言うと、たとえば…「門・玄関」という項目のなかでは「建物や敷地の門、玄関は接近する道路から見えやすい位置につくること。門や玄関に、材料、自然などを取り込み、真鶴町を表現すること。」とあります。あとはイメージとして写真や絵が並んでいる、という感じ。一般的には景観形成に関する条例などは「傾斜の角度は○°」とか「高さは○mまで」とか具体的な数値を基準にしていますが、美の基準では言葉による表現をしているのです。

美の基準はこんな冊子になっています。イラストや写真が多めで、感覚的に伝わるような表現になっています。

これを実際にかたちにしているのは、施主と行政との対話型協議。まずは施主の希望や思いを聞くところから始め、その人の好み、予算、現場の状況を見て最もよい形をみつけるために話し合いを重ねていきます。これは紋切り型のルールでしばるよりもはるかに大変な作業です、町民も役場の職員さんも。でもこれによって「考える」作業が発生して、住民の意識が変わってきたと言います。

高台から真鶴湾を見下ろしたところ。これは守りたくなる景色です。

たしかに、真鶴に暮らすひとたちってとてもシビックプライドが高い気がするのです。美の基準の存在も、町民のみなさんのまちを大切に思う気持ちを育てている一助なのかもしれません。最近は若い移住者も増えている真鶴。古くからの住民と移住者とが一緒にまちを守っていくのにも美の基準は一役買ってくれそうです。

ちょっと文学的な表現の文章にわかりやすいイラストと写真が並んで、実は読み物としても面白い「美の基準」。真鶴町役場から取り寄せることができますので、興味のある方はぜひご一読ください。真鶴に遊びに行った際は小田原にもぜひ立ち寄ってくださいねー!

[暮らしの教室から 3つの質問]
■卜部さんのターニングポイント
組織につきものの配置転換でも与えられた環境でとにかく一生懸命仕事したこと。そこから、逆にやりたいことを継続できる環境や信頼を得られたと思う。なんとか今につながっている。
 
■幸せのモノサシ
真鶴で暮して楽しめること。琴ヶ浜で子どもと磯遊びをしたり、真鶴まちなーれなどのイベントを通して真鶴の港や空家で現代アートを観れたり。東京に行かなくても真鶴という町で生活して楽しめることが幸せ。
 
■これから望む社会
真鶴が“生き方の選択肢があるまち”になってほしい。でもすでにその兆しは少しずつ見えている。もともと真鶴を出たいと思っていた若者たちが、真鶴にUターンする前提で東京で働いていたり、東京に行かず真鶴で起業を模索していたりして、“帰ってきたいまち”“ここで生きていきたい町”になり始めている気がしている。

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卜部直也 (うらべ なおや)

学生時代に美の条例と出会い、真鶴町の生き方に惹かれ移住。真鶴町に入庁して10年間、美の条例の運用を担当。「理想と現実」をたっぷり味わいながら、美の基準と向き合う日々を過ごす。現在は政策課に所属して、様々な町民事業と連携しながら真鶴町の地域づくりに取り組む。真鶴町民としても、港町の暮らしを満喫中。