特別教室116 八幡宏 「個展『古民家はじめました 2016-2022』&トーク&やはた写真館」レポート
講師 八幡 宏
会場 旧三福
日程 2023/01/27(金)-2023/01/29(日)
2023年最初の、そして旧三福が移転して初めての暮らしの教室。お招きしたのは二宮在住のカメラマン、八幡宏さんです。旧三福不動産もリノベーションの竣工写真をいつも八幡さんにお願いしていて、信頼を置いているカメラマンさんなのです。今回は初めての試みで、写真展『古民家はじめました 2016-2022』と撮影会『やはた写真館』を一緒に開催しました。
写真展は、ご自宅の古民家を中心に暮らしのなかで撮った写真、中郡の人々の“手”だけを撮った連作、そしてこれまでの「やはた写真館」で撮った家族写真、と3つのテーマで構成されました。
なにげない暮らしの中の小さなひかりをすくい上げるような、優しく素朴な写真たち。飾らない八幡さんのお人柄が伝わってくるような作品ばかりです。
八幡さんのお気に入りは手のシリーズ。手そのものだけでなく手の出し方にもその人ならではの個性があって、顔は一切写っていないのにそこに確かに人が写っている感じがするのがいいんですよ、と八幡さん。たしかに、手だけの白黒写真なのに豊かな表情と人間の温度を感じました。
そんな作品たちに囲まれながらの3日目のトークイベントは、満員御礼!
八幡さんの少年時代のお話から、もともと二宮出身の八幡さんが二宮にUターンしてからの変化まで、たくさんの質問にお答えいただきました。
トークのなかで、長くカメラマンを続けてきた秘訣を伺ったときに八幡さんのおっしゃった言葉がとても心に残りました。
ー「周りに生かされてるんです。僕はひとつひとつ良い仕事をしていくだけ」。
都内からUターンしてきた時、八幡さんは二宮にはきっと写真の仕事はないだろうと思っていたと言います。ですが自己紹介でカメラマンをしていると話すと、“じゃあ撮ってよ”と二宮のあちこちから声が掛かって、他の方へ紹介され…と気づけば今ではお仕事の半分以上は西湘、湘南エリアからの依頼になっているそう。
いつも仕事をお願いしているわたしたちからすると、八幡さんの感性と、丁寧で心遣いのある仕事があってこその今だと思うけれど「こうなれたのは本当にたまたまで、頼んでくれる人がいるからこそ僕は写真が撮れるから感謝しかないんです」とご本人はどこまでも謙虚。慢心せず常に感謝を忘れないその心もちがファインダーを通して優しい写真に表れるのだなぁ、と感じました。
トークイベントのあとは、皆さんお待ちかねの『やはた写真館』。事前に申し込みをしてくださった方のポートレートを八幡さんが撮影します。人を撮るのが一番好きだという八幡さんのライフワークですが“仕事”として気負いたくないから、と撮影料はごくごく安価。互いにゆるりとリラックスした雰囲気だからこそ撮れる写真もいいじゃないですか、と八幡さん。皆さん照れながらもすごく楽しそうに撮ってもらっていて、見ているこちらもほっこりしました。
最後は暮らしの教室の運営メンバーが揃って撮影してもらい、3日間のイベントは終了しました。
思えば、会期中はずっと和やかな時間が流れていました。あたたかいまなざしの写真が空間を自然と優しくしてくれていたのかな。
[暮らしの教室から 3つの質問]
■八幡さんのターニングポイント
ボランティアで東日本大震災の被災地へ行ったこと。独立はしていたものの、改めて“やりたいことをやらないとな”と思った。
■幸せのモノサシ
写真を撮る機会があること。写真は目に映るものを肯定する作業だから、ポジティブな行為。撮っているうちに元気になることもある。幼い頃からマイナス思考が強かったけど、写真を撮っているなかで変わってきた。
■これから望む社会
二宮にはあんまりちゃんとした町にならず、いつまでもほどほどでいてほしい。片足は常にダサくあってほしい。
格式が上がってスキがなくなってしまったら嫌だから。
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八幡宏(やはたひろし)
1972年二宮町生まれ。カメラマン。
大学卒業後、会社員になるものの工場勤務に馴染めずに3年で退社。
小学生の頃から興味のあった写真を勉強するために夜間の写真学校へ。
ブライダル撮影からカメラマンのキャリアをスタートし、料理、建築、人物などあらゆるジャンルの撮影現場を行ったり来たり。
古民家(借家)を見つけたことをきっかけに2016年冬、二宮にUターン。
Instagram:@yahatahiroshi