特別教室129回 大草貴之さん「暮らしに役立つ漢方のはなし」レポート

講師 大草貴之さん(大草薬品株式会社大草薬品株式会社 代表)

会場 熊澤酒造

日程 2024/2/4 

茅ヶ崎 熊澤酒造で行われた特別教室129回。
講師には、創業90年を越える老舗漢方メーカー「大草薬品㈱」大草貴之さんをお招きしました。

気になるけれど「何となく難しそう」「どのように取り入れたらいいかわからない」というイメージがある”漢方”。
今回の暮らしの教室では、漢方薬について、女性に優しい漢方薬のこと、日常的に取り入れる方法などを詳しくお話いただきました。

実際にご覧いただきながら身近な薬のことを教えていただきます。

誰もが聞き覚えのある漢方薬、「葛根湯」などの名前の最後についている「~湯」「~散」「~丸」について

これは、それぞれの作り方と飲み方を表しています。

「~湯」本来、生薬を煎じた薬のこと。

→今は、エキス顆粒やエキス錠として販売されている。

「~散」生薬を粉末にして混ぜたもの。

→水で煎じると抽出しにくい成分がある場合には、散のまま服用した方が効果を実感できる。

「~丸」粉末にした生薬を蜂蜜などで固めて粒状にしたもの。

→そのまま噛んだり舐めたりせず、水や白湯で飲むとよいとされている。

漢方の原料は、植物以外にも動物や鉱物など幅広いそうです。

実はアスピリン(西洋ヤナギ)やタミフル(大ウイキョウ)などの医薬品の原料が、私達にとても近しい自然の植物や天産物であるということも教えていただきました。

何気なく知っていた薬も、名前の持つ意味や原料がわかると身近に感じて、取り入れやすくなりそうです。

漢方には、胃腸障害の予防や血流改善のためにお酒と一緒に飲む「酒服」という考え方があり、「八味地黄丸」や「当帰芍薬散」等は「酒服」という方法もあるとのことです。「漢方×お酒」との親和性も高いことに驚きでした。

※但し、酒服する際には適切な量やタイミングが大切ですので、ご注意ください。


一年の健康長寿を願って飲む「お屠蘇」は、生薬を日本酒や味醂(みりん)に浸したもの。

熊澤酒造の天青で仕込んだ「お屠蘇」を用意していただき、皆様に実際にお試ししていただきます。

「屠」は邪気を払い、「蘇」は心身を目覚めさせ、蘇らせるとの意味に由来するといわれています。

使われる生薬はものにより異なりますが、身体を温めたり、胃腸の働きを助けたり、風邪の予防に効果的な生薬を組合わせたものが多いようです。

皆様から「美味しい!」とのお声も。

漢方薬を飲みたいと思っているものの「まずい」「味が嫌い」「苦い」といった悩みを抱えている方も多いはず。

ですが、方法によっては美味しいと感じられる飲み方もあるのです。

そして、漢方は飲み薬だけではないのです。

紫色をしている軟膏「紫雲膏(しうんこう)」の紹介も。
中国から伝わる「潤肌膏 (じゅんきこう)」から改良されて出来た紫雲膏は、湿疹やカサカサした皮膚に効果的。

品質と安全が確保できているものを選び、添加物も入っていない生薬だけで作った軟膏は万が一舐めても大丈夫な塗り薬。

長崎大学から依頼を受けて大草薬品の紫雲膏を使用するエチオピアに行った時のお写真

また大草薬品の紫雲膏は劣化や酸化を防ぐため、豚脂を使わず作られています。
そのため、イスラム圏の方々にも安心して使用され、幅広い場所で役立ってほしいという願いから、長崎大学及びタマサート大学(タイ)と共同で「皮膚リーシュマニア症」の臨床試験をエチオピアにておこなったそうです。

安心して使うことができる、それも漢方のやさしくて良いところ。

その後は、実践編。

今回は、当帰芍薬散の原料生薬を実際に見て触っていただきました。

6種類の生薬を配合してできている「当帰芍薬散」は体力が乏しく、冷え性で貧血気味、疲労しやすい人。にお勧めだそうです。こんな原料でできているんだ!などの発見もあり、楽しく手に取ってみる皆さん。

漢方の特徴的な考え方は、生き物が備えている自然治癒力を大切にすること。

常日ごろから養生をして体調を整えておけば、ちょっとした体調不良は自然治癒力により治ります。

体に異常はないのに不調が続く「不定愁訴」の症状。現代人にも多いこの症状には漢方薬の出番。自分にあった形を上手に取り入れることで、よい結果をもたらしてくれます。

「漢方には中庸という考え方がありますが、デコボコから平らに、全体にバランスを整えていくというイメージ」という大草さん。

快食、快便、快眠、温活、そして社会参加をすることで、未病を防ぎ軽いうちに異常を見つけて病気を予防していくことが大切だとおっしゃっていました。

漢方は、体のバランスを整えて、自身が本来もっている力を目覚めさせてくれるもの、そして思っていたよりも身近で、優しく、あたたかく、そして美味しいものだと学びました。

■暮らしの教室からの3つの質問

ー大草さんの人生のターニングポイントは?
会社の代表になった時。
身が引き締まったきっかけでもある。

ー大草さんの幸せのものさしとは?
家族、そして身近に漢方があること
大病を患わず健康でいること 。

ーこれからの未来に望むことは?
社会貢献していくこと。

そのためには社員が働いてよかったと思う会社でいること。
社会の役に立つこと、そして身近に漢方を感じてもらうこと。

講演が終わった後も大草さんへの質問が途切れず、熱心にお話を聞く皆さんを見て漢方への関心、興味の高さがうかがえました。

漢方との距離がぐっと近づいたのではないでしょうか。

大草さん、貴重なお話をありがとうございました。

大草薬品株式会社のホームページ

https://www.okusa.co.jp/

トップへ戻る