特別教室77 大竹雅一さん講演レポート

講師 大竹雅一さん(マウンテンバイクショップオオタケ店主)

会場 熊澤酒造

日程 2018/10/20

「薪と畑とマウンテンバイク」

 

10月20日(土)mokichi wurst café地下にて暮らしの教室が開かれました。

大竹さん自身の謎めいた存在。「いったい結局何をやってるひとなの?」というところから始まりました。

まずマウンテンバイク界のレジェンドとしての大竹さん。

カブトムシを捕りたくて遠くにいくために自転車をはじめた幼少期。はまり込むのはいつのまにか自転車のほうにかわっていったと言います。ハイペース、ハイスピードの大竹さんに周りはついていけません。単独で走り抜く大竹さんに開いた世界は自転車レースの世界。実業団に入っていきなり7位を獲得するも、それまで只々楽しかった自転車の世界が、勝たなければいけないというプレッシャーにかわり、大竹さんは「強烈にいやだった」と語ります。

何か結果を出さなければいけない。それもすぐに。そのプレッシャーは大竹さんの資本主義に対する疑問を抱かせました。

レースを引退した大竹さんはアメリカへ赴きそこで本場のマウンテンバイクのプロレースの部品をサポートするポジションに就き、新しい境地が開けます。ご自身もレースに参加し、まだマウンテンバイク自体が浸透していなかった日本の全日本選手権で入賞されます。この辺りが大竹さんがマウンテンバイク界のレジェンドと言われる所以。ですが御自身は「アメリカのコロラボにある山の麓の自転車店が、ヒッピーみたいで、レースが終わったらわいわいやって、自分はそういう人間だったんだと感じた。」と、自然に触れ合う事や、勝ち負けでは測れない自転車そのものの醍醐味を懐かしそうに語られていました。この辺りが「マウンテンバイクショップ・オオタケ」の原点のようです。

そして、思いついて半年で実業団を辞め、秦野に現在のショップを開業してしまうのです。秦野の里山でマウンテンバイクライフを満喫していく大竹さん。そんな中、時間も経ち古くなった店舗をセルフリノベーションすることにし、店を1年半ほど閉めることを決意します。

ふつうお金を稼いでリノベーションは業者に頼むところを、大竹さんは全く考えられないほどのパワーを発揮して、どんどんお店を直していきます。「とにかく思いついたらやってみていた。」「何でも自分でやってみよう。やってるうちに何でもできる。と思っちゃう。」子供のように語る大竹さんは、眼がきらきらしています。この感覚が、大竹さんにとって、自転車をバラバラに解体して分からなくなったけどなんとかできた。という幼少時のわくわく感と繋がるようです。できないだろうということを、誰かにきいてやってみたらできた。その繰り返し。それが大竹さんの人生の軌跡を確かに築いてきたのです。

店舗をリノベーションしているときに、様々な場所に見える「コストダウン、高率化」の仕事は、手抜きにも現れているように、人間味を失っているように感じ、逆に自分ですべてやることによって、有機的なもの、人間的なものを獲得していく。すべて手作業だった昔の人の智慧、じっくり構えた時間軸、そんなものを想像する。そんな最中、あの大震災(9・11)が訪れます。幸い店舗は無事でしたが、停電によって作業が中断します。エネルギーの脆さを感じたという大竹さん。しかし自分でやっていたからこそ、ダイレクトにそのことを感じ、出来る限り、自分の力で生活しようと考えたと言います。「あの震災で何も感じなかったひとは鈍感。」と、皮肉をたっぷり込めて?大竹さんは朗らかに笑っていらっしゃいました。

大竹さんにとって家やマウンテンバイクは手を入れながら一緒に成長していくもの。自分とともに齢をとっていく。だから大事だし、終わらない。

もともと薪ストーブを入れる予定でリノベーションをしていた大竹さん。ある程度お店が落ち着いたところで薪ライフの始まりです。

薪は、良い薪として完成するまでに時間がかかります。木の種類からはじまって、水をどう抜くか、小口をぴちっと揃えて切ること。この理想形に持っていくことが大竹さんのアートなのです。

ストーブのシステムなどをお話しいただき、ますます眼を輝かせる大竹さんですが、なぜここまで薪づくりに惹かれてしまったのでしょうか。

「薪には実体がある。」と大竹さんは言います。石油燃料と出どころは同じだけれども、薪の仕事としての伐採、運ぶ、割る、などの苦労全てが、燃やす時に思い出され、リアリティーのあるエネルギーとして実体を持つのだと言います。現代は実体が無い。特にエネルギーが。そう語る大竹さんの眼差しは、いつでもあの資本主義の「かんたん、便利、安い」とういうそれを追求する、実感の無い、つまらない世界と対極に在りつつ立ち還っていきます。

やりたいことを秘めながら、誰かしら見ていて、助言をくれる。現代社会の結果や到達点重視の“トリップ”ではなく、かけがえのない、時間をかけて辿り着いた目的地までの全て、そのプロセスが“ジャーニー”であり、それが人生だと、これからも終わりがなく続いていくのだと締めくくられていました。

さて、最後に幸せのモノサシを大竹さんに伺います。

  1. ターニングポイントはいつでしたか?
  2. 現在の幸せのモノサシは何ですか?
  3. 将来どんな社会になってほしいですか?

まず1、マウンテンバイクに出会ったことだそうです。大竹さんの「エクストリーム+ヒッピー」精神にマッチ。確かにここで方向性のようなものが出来たようです。

2は、冬がずっとあったらいいな。だそう。もう薪ストーブ好きすぎて、現在秋でまだ暖かい陽気の日もありますが、窓開けてストーブ炊いちゃってるそうです。

3は…現在のテクノロジーを使って、商品などにひとつひとつ、物語(創られるまでのストーリー、歴史、人間性を持った情報)のタグが付いて、スマホをかざすとその情報が取り出せるみたいになって、同じような商品でもそれが見分けられるようになったらいいな、とおっしゃってました。昔の人々のどっしり構えた英知に憧れながらも(実践しつつも)現代のテクノロジーを否定されているわけではないところが、マウンテンバイク先駆者の大竹さんらしいです。

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okeba村石(え)

 

 

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