特別教室70 後藤英彦「摺り・ばれん職人からみえること」レポート
講師
会場 茶屋町路地
日程
遠い記憶だが小学校の時版画をやった記憶がある。
木の板を下書きにそって掘って絵の具をつけて紙に転写する。
その時ばれんを持った最後じゃないかと思う。
僕が使ったばれんはもちろん大量生産のばれんだ。
プロの浮世絵師が使うのは本ばれんと呼ばれるもので、後藤さんは日本に数人しかいない本ばれん職人の一人だ。
本ばれんの内部は古い和紙を漆で固めたものと竹の繊維を編んだ小さな縄がとぐろ状に収められている。この竹は特殊な竹で後藤さんはその竹の栽培から行なっているということだった。一つのばれんを作るのに半年もかかる。気が遠くなる作業だ。
縄の厚さによって刷りの表情はかわるので表現によって職人はばれんの種類を使い分けている。軽く力がかかりやすい本ばれんでなければ微妙な表現ができない。
微妙な表現と書いたが、浮世絵ではそれが大きな違いを生む。
大きな違いは後藤さんの気の遠くなるような作業量を厭わない職人魂によって支えられている。
大磯 ハラダイスケ