特別教室121「路上園芸鑑賞」で、いつものまちのお宝さがし レポート

講師 村田あやこ(路上園芸鑑賞家・ライター)

会場 熊澤酒造

日程 6/11 15:30 - 17:30

6月の特別教室は茅ヶ崎 熊澤酒造にて、路上園芸鑑賞家 村田あやこさんをゲストにお招きしました。

村田さんは路上園芸家と自ら名乗り、ライター、企画会社での活動や、「SABOTENS」というユニットを結成し、路上から着想を得たものを展示やグッズで表現したりと多岐に渡りご活動されています。

10年ほど前のある日、村田さんは印象的な風景に出会います。
それは個人商店の前にあった”鉢植え”。
勝手に繁茂し無造作に鉢からはみ出た緑、そして、その横で鎮座している信楽焼のたぬき。
独自の世界観が生まれているその鉢植えに目を奪われたそうです。
それが初めての路上園芸との出会い。その場所は「茅ヶ崎」だったそうです。

村田さんが初めて気になった風景 in 茅ヶ崎

そして、それ以来、植物に関わることを仕事にしたいと決心した村田さんは、住宅や店舗の前など、路上を舞台に繰り広げられる園芸や、路上が自然と育んでしまった風景を”路上園芸”と称し、愛でながら見守りながら活動の幅を広げていかれました。

身近にあるなんてことない風景を、視点を変えて面白がることで日常を豊かにする、その一つの入り口が「路上園芸」と村田さんは言います。
園芸を通して、町と人との関係、その地域で愛されているもの、特性、人柄が見えてきます。なんてことない鉢植えの背後には、人間ドラマがある。
そして、人の手がかけられていない野生の植物は、枠なんて関係なく、スキマや場所があればどこでも咲いてしまう。そのはみ出した姿に勇気をもらう、と。

スキマを舞台に循環している命の営みの素晴らしさ、人間とは違うルールで生きている植物の強さ、無計画にふいに生まれた風景の愛おしさなどを村田さんが撮影した写真を見ながら紹介して頂きました。

村田さんならではの独自の視点をインストールしつつ、それぞれ自分が心惹かれるものへの視点を持つことの大切さを教えていただきました。村田さんのはみだす緑を愛する心が伝わってきます。

その後、実際に路上園芸を鑑賞してみようと参加者の皆さんと外に繰り出しました。
熊澤酒造敷地内、周辺をじっくりと鑑賞。

「こんなところにセダムの大群が!」「コンクリートの隙間から緑が!」など、村田さんの視点をインストールした後はたくさんの発見があり、会話が生まれ、何気ない風景の緑が人と人との距離を縮めていくのを感じました。

村田さんの繰り出すワードは楽しく、路上園芸をさらに楽しませてくれます。

例えば、「転職鉢」…別用途の容器が転用された植木鉢。そこにくぼみがあれば何だって鉢になれる。楽しい第二の人生を謳歌しています。熊澤酒造には転職鉢が沢山ありました。
ユーモアあふれるネーミングが、緑をより身近に親しみを感じさせてくれます。

気になる鉢を発見..!
熊澤酒造の転職鉢 以前は違う用途で使われていた鉢。

その後、皆それぞれが心惹かれた風景の写真を見ながら共有しました。
旅立ってきたタネもスキマを見つけて根差し、鉢でもスキマでも関係ねー!と強い生命力で根差す緑に、力をもらいます。と村田さん。
トークのなかで何度もおっしゃっていた村田さんの「地べたからものを考えること、目で見たものを大切にする」という言葉が心に残っています。

「はみだす緑」を鑑賞することは、「はみだしていてもいい」状況に出会うことでもあります。そこには私たちの生きるこの世界が「はみだす」を肯定する場所であってほしい、という願いが込められていました。

おもりにしていた袋から生えていたセダム。#はみだせ緑

村田さんのお話を聞いた後、何気なく歩く道の緑を気にしてみると楽しい世界が広がっていました。そして、ほっと心が解きほぐれていきました。


どんな町でも見られるありふれた風景を面白がること、そして自由に感じること。
視点を変えると、いつもの日常には輝くお宝がたくさん転がっているはずです。

■暮らしの教室からの3つの質問

ー村田さんの人生のターニングポイントは?
茅ヶ崎で路上園芸とタヌキに出会った時。
地べたからものを考えること、目で見たところからキャッチすることで心と体が健全になった。
恥ずかしいと思うことでも発信していくことで共感を得る人に出会い、世界が広がった。
好きなことから仕事が広がっていった。

ー村田さんの幸せのものさしとは?

まっさらな気持ちで地べたから考えること。心と体を調和させること。
今までも拙いものでも発信することで伝わっていくことが多かった。

ーこれからの未来に望むことは?

計画しすぎないこと、自然にやってきたものを受けいれること。

植物は緩く溶かしてくれる存在。植物だと人の心の余白にすっと入っていく。
はみだす緑の様に、はみだしてしまったものもいいねと受け入れるような
自分の視点、他の人の視点を楽しんでやわらかく受け入れ合う町、社会になれば。

コンクリートの小さなスキマから生えている緑たち

講師 村田あやこ

路上園芸鑑賞家/ライター。街の植物や園芸の魅力を書籍やウェブ等で発信。お散歩ユニット「SABOTENS」としても活動し、組み合わせると路上園芸の風景が作れる「家ンゲイはんこ」を制作。著書に『たのしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。寄稿書籍に『街角図鑑』『街角図鑑 街と境界編』(実業之日本社)。散歩の達人等で連載中。「ボタニカルを愛でたい」(フジテレビ)出演中。

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