特別教室128 馬場拓也「春日台センターセンターのすごい話」レポート

講師 馬場拓也(社会福祉法人愛川舜寿会)

会場 旧三福

日程 2024/01/20(土)14:00 - 16:30

神奈川県愛川町にある「春日台センターセンター」。かつて地域の方々が集まる場だったスーパーマーケット「春日台センター」の跡地にできた“地域共生文化拠点”です。高齢者の住まい(グループホーム)や高齢者と障害のある子どものデイサービス、障害者就労継続支援の、コロッケ屋とランドリー、学習支援の寺子屋、駄菓子屋…などさまざまな役割がひとつに集まった、既存の何かになぞらえることができない場所です。

ここを運営する社会福祉法人愛川舜寿会の理事長、馬場拓也さんをお招きして、春日台センターセンターのあらましとオープンまでの歴史をじっくりお聞きしました。この日は満員御礼。30,40代の方を中心にたくさんの方が聞きに来てくださいました。馬場さんのユーモアある語り口にすぐに場が和んでいきました。

お話を聞いていくうちに、センターセンターのあり方というのは新しい姿のようであって、実は元来地域ってこういうものだったんじゃないかなぁ、という気がしてきました。お年寄り、子ども、障害のある人、外国にルーツのある人たち…いろいろな人たちが集まって、わざわざ「ダイバーシティ」なんて言葉を用いずともその存在を認め合って(認め合う、なんて工程すらそこにはきっとない)自然と相互作用が起こっていく。ご近所付き合いが希薄になったと言われて久しいけれど、ここにはちゃんと人と人とのあたたかいお付き合いがあるみたい。こんなに開かれて、こんなに楽しそうで、みんなが自由で、いいなぁ、すてきだなぁ。気づけば目元がじわっと熱くなっていました。

「これからはドラえもんではなくて、のび太がのび太を助ける時代になっていくと思うんです」と馬場さんは言います。強い者が弱いものを虐げる時代を経て、今は弱者がさらに弱いものを叩く時代になってしまった。そこを打破して、これからはみんなが助け合い支え合う社会になっていく、馬場さんはそんなイメージを持っています。そして事業を通して社会全体の福祉に対するリテラシーを高めていこうとされているのです。

たどり着くまでに5年考え続けたという愛川舜寿会の理念は『社会をやさしくする』。
「自分以外の誰かのことをちょっとだけ気にかけられるように 私たちは福祉をひらき 社会“に”ではなく 社会“を”やさしくしたい」 そんなボディコピーが添えられています。

春日台センターセンターはきっとすでに小さな“やさしい社会”だと思うのです。ここをお手本に、もう一度みんなで社会をやさしくしていきたい。ちょっとずつでも、必ずできる。この日集まったみなさんが、そんなふうに信じられたんじゃないかな。とっても、とってもいい時間でした。

[暮らしの教室から 3つの質問]

■馬場さんのターニングポイント
2016年7月26日に起きた「相模原障害者施設殺傷事件」
運営する特別養護老人ホームと犯人(事件のあった施設の元職員)の当時の住まいが近かったことから、場合によっては彼が働いていたのは自法人のホームだったかもしれない、と気がついた時。

■幸せのモノサシ
嘘をつかず正直でイイ仕事ができていること。福祉の仕事は本当に面白くて、何かの見栄や綺麗事とも言われてしまうような正直な気持ちを言葉にできる。そして、人間ドラマのなかで、日々さまざまなことが起こる喜劇のような日常のなかにいられることが幸せ。

■これから望む社会
今センターセンターに遊びに来ている子どもたちが、あの場での経験や原風景をもとに、大人になった時に自らアクションを起こせるようになっていたらいいなと願っています。

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社会福祉法人愛川舜寿会 aikawa-shunjukai 理事長 馬場拓也


1976年神奈川県生まれ。大学卒業後、外資系アパレル企業を経て、2010年 に2代目経営者として現法人に参画。特養の庭を地域開放した「ミノワ座ガーデン」、市民の語り場「あいかわ暮らすラボ」を運営。2019年に障がいのあるなしによらず共に育ち合うインクルーシブ保育園「カミヤト凸凹保育園plus」を開園。2022年には地域共生文化拠点「春日台センターセンター」、洗濯デリバリーサービス「洗濯文化研究所」を開設し、「2023日本建築学会賞(作品)」、「グッドデザイン金賞」を受賞。著書「介護業界の人材獲得戦略(幻冬舎)」共著「わたしの身体はままならない(河出書房新社)」「壁を壊すケア(岩波書店)」など。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント修士課程修了。

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