特別教室137 レポート 酒井里菜「発酵で楽しい社会を!~未利用資源と発酵でつくる楽しい循環~」

講師 酒井 里奈(株式会社ファーメンステーション代表取締役)

会場 熊澤酒造

日程 15:30-17:00

特別教室137 「発酵で楽しい社会を!Fermenting a Renewable Sociery~未利用資源と発酵でつくる楽しい循環~」レポート

11月茅ヶ崎 熊澤酒造で開催された特別教室では、株式会社ファーメンステーション代表の酒井里菜さんをお迎えし、発酵技術を活用した未利用資源の価値化についてお話を伺いました。

酒井さんがどのようにして「未利用資源を宝物に変える」というビジョンを実現しているのか、その熱い思いと挑戦を共有していただきました。

酒井さんが微生物に興味を抱いたきっかけは、転職後の農業分野での経験と、「社会のために意義のあることをしたい」という強い思いから始まりました。
その後、食品廃棄物を活用し、石油依存から脱却した自然由来の素材を作り出したいという思いから、ファーメンステーションを設立しました。

ファーメンステーションでは、休耕田や食品廃棄物を活用し、新たな素材や商品の開発を行っています。
りんごやゆずの搾りかす、コーヒーかすなど、一般的にはゴミといわれて廃棄される素材を発酵技術で加工し、化粧品や食品の原料として再生しています。これにより、微生物の力を利用して自然由来の香りや機能を付加し、新しい価値を創造しています。

例えば、コーヒーのかす からバニラの香りを作り出す技術。
現在、バニラの香りは気候変動により高騰し、さらに石油由来の合成香料に頼ることが増えています。しかし、酒井さんは発酵の力を活用することで、持続可能な方法でこの香りを再生産されています。
実際に香り高いサンプルをいただき、その香りが「ゴミからできたもの?」という驚きと感動を覚えました。
今後、この技術が色々な場所で活用され、微生物の力で未来を拓く日も近いのではないでしょうか。

米由来のオーガニックエタノールや未利用資源からできた香りサンプルの数々。


ファーメンステーションでは、オーガニック認証を取得したお米由来のエタノールや化粧品原料も開発中。これらは、環境に配慮した持続可能な素材として注目されています。
また、熊澤酒造でお酒つくりをしていた関わりや、Bコープ認証についても触れ、企業の社会的責任を果たしながら事業を展開していることを語ってくださいました。


酒井さんの言葉「ゴミ(未利用資源)は宝物」というフレーズが心に残り、私たち一人一人が物事をどのように捉えるかで、社会の価値観が大きく変わる可能性を感じました。

そして、物事を多角的に見ることで新しい価値が見つかるということ。
常識を超えて発想し、循環型の社会を作り出すために一歩踏み出す勇気が、これからの未来を作るのだと強く感じました。
いつか酒井さんの夢である「ファーメンランド」が実現し、目に見える形でその循環を目撃できることを楽しみにしています。
酒井さん、貴重なお話をありがとうございました!

■暮らしの教室からの3つの質問

ー酒井さんの人生のターニングポイントは?
振り返ってみると、それは小さなことの積み重ねではあると思う。印象的だった出来事は、海外出張の際にハンバーガー屋さんに行った時に ハンバーガーを1個注文したはずが間違えて2個用意されてしまった。 1つしか頼んでないですよ、と伝えると 「じゃあ、捨てて」と言われてしまった。 その時に違和感と怒りを覚え、 社会で意義のあること何かをしたい!と強く思った。

ー酒井さんの幸せのものさしとは?
仕事をしていて 通じたな!と感じた時。伝えていることが広がっているなと感じること。そして、この会社がやれていること。

ーこれからの未来に望むことは?

未利用資源がゴミと思われないことが当たり前の社会になれば。

ー 講師プロフィール ー
株式会社ファーメンステーション代表取締役
酒井 里奈
国内及び外資金融機関、ベンチャー企業でM&Aや経営企画などに従事。発酵技術を学ぶために東京農業大学応用生物科学部機造科学科に入学、09年3月卒業。同年、株式会社ファーメンステーション設立。ファーメンステーションは、独自の発酵技術を活用し、未利用資源を機能性のある素材や製品にする事業に取り組み、サーキュラーエコノミーの実現を目指している。事業性と社会性を両立したビジネスの実現を追求し、BCorp認証取得。

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