特別教室143 指出一正「オン・ザ・ロード 二拠点思考」レポート
講師 指出一正(『ソトコト』編集長)
会場 旧三福ビルヂング
日程 2025/05/18(日) 14:00 - 16:00

2025年5月、旧三福で開催した「暮らしの教室」にお招きしたのは『ソトコト』編集長・指出一正さん。旧三福で指出さんにおしゃべりいただいたのは実は10年ぶり2回目。長い時を経てまたこうして小田原へお越しいただけたことがとっても嬉しかったです!
指出さんは2011年から『ソトコト』の編集長を務め、SDGsやローカル、関係人口といったテーマを先駆けて発信してきた方です。今回は8年ぶりの著書『オン・ザ・ロード 二拠点思考』を引っ提げてのご登壇。近年はご自身も神戸と東京の二拠点で暮らしている指出さんに、“二拠点思考”をテーマに地域・地方との関わり方などを語っていただきました。


幅広いジャンルでお話いただいたなかで、旧三福不動産的に特に刺さったのは「やわらかいインフラ7」のお話(もうこの「やわらかいインフラ」ってネーミングからしてセンスを感じて前のめりに聞いてしまいました)。
指出さんいわく、地域にあると新しい移住者が現れやすいスポットや環境が7つあるそうなのです。
「おいしいコーヒー」
「バチバチのwi-fi環境」
「同世代の仲間」
「おしゃれな本屋」
「盛り上がるブルワリー」
「使い勝手のいいコワーキングスペース」
「最高のパン」がその7つ。
(それぞれの理由は『オン・ザ・ロード』に詳しく書いてあるのでぜひ!)
これ、自分自身の実感を持って納得してしまいました。そうそう、もはやこれらって大事な暮らしのインフラ!自分の住むまちにはこれがあってほしい。

でもこの7つ、小田原もなかなかいい線行ってると思いませんか。考えてみるとここ10年間でこの7つのインフラって小田原に少しずつ増えてきていると思うのです。
もちろん10年前にだっておいしいコーヒーも愛される本屋さんもあったけれど、それぞれ新しいお店がちゃんと増えてきてる。コワーキングスペースだって昔は旧三福しかなかったのに、気づけばいろんなカラーの拠点が増えて自分に合った場所を選べるようになっているし。
だけどこの話って、7つのインフラさえ作れば必ず移住者が集まる、って単純なことではなくて、こういうインフラが若い人たちや移住者によって新しく生み出されて馴染んでいる(馴染みつつある)こと、まちの人たちに受け入れられていること、それが大事だと思うのです。まちに新しい風が吹いて、先住者も移住者もみんながそれを心地よく浴びている感じ。そんなバイブスのある場所だと、移住者だけじゃなくて若者も居心地が良くてまちに歓迎されているように思えるんじゃないかな。
小田原も少しずつ、でもちゃんとそういうまちになってきていると思うんです。うれしい!
きっと10年後には10年後の「やわらかいインフラ」があるんだろうから、それが軽やかに生まれていく土壌をつくっておくのがこれからの旧三福不動産の役目かな。10年後、また指出さんを小田原にお招きして誇りを持ってご案内できる私たちでいたいなぁ。そんなふうに思ってちょっと背筋が伸びたのでした。
《暮らしの教室から3つの質問》
●指出さんのターニングポイント
2011年にソトコト編集長に就任したこと。東日本大震災という大きな出来事をきっかけに、雑誌をはじめとするメディアの役割が変わったと感じた。ソトコトも「エコ」「ロハス」といった路線から、「ソーシャル」「人」を見つめる方向へ舵を切り、目の前の人が幸せになるための雑誌を目指した。
●指出さんの幸せのモノサシ
自分から積極的に友だちをつくるタイプではないのだが、新しい出会いのなかで共通点が見つかったりすると嬉しくなる。イベントなどで繋がりを作ってくれる方がいることが有り難い。
●これからの社会、地域がこういうふうになってほしい
人間は即物的な幸せに手を伸ばしがちだけど、家族と過ごす時間みたいなじわじわと感じる日常の幸せに目を向けてほしい。比較のための幸せではなく、それぞれが自分にとっての本質的な幸せを実感できるようになれたらいいんじゃないか。
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指出一正(さしで・かずまさ)
『ソトコト』編集長。1969年群馬県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業。雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現職。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師、山形県金山町「カネヤマノジカンデザインスクール」メイン講師、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師、福島相双復興推進機構「ふくしま未来創造アカデミー」メイン講師、秋田県鹿角市「かづコトアカデミー」メイン講師、群馬県庁31階「ソーシャルマルシェ&キッチン『GINGHAM(ギンガム)』」プロデューサーをはじめ、地域のプロジェクトに多く携わる。内閣官房、総務省、国土交通省、農林水産省、環境省などの国の委員も務める。経済産業省「2025年大阪・関西万博日本館」クリエイター。上智大学「オールソフィアンズフェスティバル2025」実行委員長。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)、『オン・ザ・ロード 二拠点思考』(ソトコト・ネットワーク)。