「日本のUMAMI,お出汁の話」レポート

講師 眞邉光英(丸眞株式会社代表取締役社長)

会場 熊澤酒造

日程 2/9 講演15:30-16:30 食事&トークショー16:30-17:30

       93回暮らしの教室 「日本のUMAMI,お出汁の話」レポート

 

2020年2月9日に、熊澤酒造「天青」麹室にて、「丸眞株式会社」代表取締役の眞邉光英さんの講演が行われました。

藤沢市円行に工場をもつ丸眞さん。起源は屋久島で、1800年代創始と言われています。

昨今新しい味覚としてUMAMIが取り沙汰されていますが、UMAMIには、3つの成分が相乗効果で掛け合わされて8倍にもなるという足し算のみではない効果があるそうです。UMAMIのこの掛け合わせて生まれる味わいを、現代のイノベーションとして発信しているのが「丸眞」さんなのです。

 

カツオを出汁として使い始めたのは室町時代。文献に「花がつお」が登場します。そもそも日本独自のものではなく、モルディブ起源説が有力なようです。魚を薫乾法という保存するために乾かした方法が発達した地域が発祥のようです。ただ、日本は薫乾するうち発生したカビを使って、発酵食品として独自に開発し、UMAMI代表の鰹節としたところが、他の国にはない文化です。鰹節の番付なども行われ、屋久島の鰹節は、大関1位(全国1位)にもなっています。丸眞さんの鰹節もその中に入っていることでしょう。

鰹節に近いものは、東南アジアから日本に伝わってきたものの、現在のようなカビ付け節、発酵食品になったのは1700年代だそうです。輸送している途中でカビが発生し、このカビが旨味成分を引き出し、腐敗菌の発生も防ぎます。(発酵食品になるということ。)かつ動物性でありながら脂肪成分の少ない透明な出汁をとることを助けてくれることを発見したのかどうかはわかりませんが、「カビいけるんじゃない?」となったようです。発酵食品文化が進んでいる日本ならではの発想と、カビやすい環境のなせる業ですね。

そんな素敵な世界に誇れるブランド「鰹節」ですが、現在問題も抱えております。実はさんざん説明してきたカビのついた発酵食品としての鰹節は、ほとんど市場に出回っていないのが現状です。カビのついていない荒節が9割以上で、発酵食品としての枯節、本枯節、血あい抜きなどは、高級品で、スーパーなどでは手に入りません。

カビを付ける作業の加わる枯節は、繊細で細かい工程を経ています。鰹節に付くカビの種類も決まっていて、乾燥度によっても更に種類が細かく分類されます。とてもデリケートな、生き物を扱う作業は、手間と時間がかかり、もうかりません。そうなると、いくら誇りを持っている本鰹職人さんがいても、その方々の生活を守ることができないのです。この現状と、流通しているイメージのギャップを知ることで、日本の文化を守っていって欲しいと眞邉さんはおっしゃっていました。

削る時の注意点

  1. カンナ刃の出具合、厚みがジャストなこと
  2. 鰹節が適していること
  3. 削る腕がいいこと

そんな貴重な本鰹節をお持ちいただき、実際に削るところから実演していただき、「ぐうたら出汁法」という出汁の取り方を教えていただきました。かなり贅沢な、よい素材を使っているので、かえって楽にできる部分もあるというところでしょうか。あまい香りが部屋中に漂い、魚というよりは、花のような香りとさえ思うのでした。

眞邉さんが削った鰹節

「ぐうたら出汁法」

そんな丸眞さんは、海外などで日本の「UMAMI」を紹介するべく活動をされていて、イタリア料理界の巨匠、グアルティエロ・マルケージさんに見いだされ、そのお弟子さんたちがドレッシングに出汁を使った斬新な新イタリア料理などを生み出しているそうです。UMAMIで星を取るところがどんどん増えているようで、つまりは日本のUMAMIが世界のUMAMIとして認知されるにしたがって、誇りをもつ本鰹職人さんたちの地位が向上していくことで文化が守られていくことに貢献されているのです。

 

眞邉さんは、自信を持って日本から発信することで、イタリアンの自信にも繋がると、丸眞の鰹節、日本の文化にたいして絶対の自信をお持ちでした。その自信が、「小さくても大きくてもイノベーションを興す」ことにつながっていくのだと感じました。

3つの質問

・ターニングポイント

丸眞創始者のイノベーター的な考え方、伝統を引き継いで新しいものを作っていきたい。バトンを繋いでいきたい。(自分に)できることで、本物の中に新しさをつくりたい。そのように、創始者さんからバトンを受け取ったと感じた時がターニングポイントのようです。

・幸せのモノサシ

お金をとりはらっても、成長と役に立つということの相乗効果のためにお手伝いできること、成長と役立ちが循環していることが嬉しい、ということでした。まさにミラノでのUMAMIの循環を目の当たりにされてのご意見だと伺えます。

・どんな未来にしたい?なっていてほしい?

まさに今未来を繋いでいる丸眞さん。バトンを受け取り次へ繋ごうとしている瞬間が続いている最なかであると感じます。そんな眞邉さんの言葉は、「コミュニケーション、対話、鰹節が軸となるイノベーティブ、才能、個性をひきだして、輝くような、それをつなぐようなことをしていきたい。それで戦争、争いがなくなればいい。」

 

貴重なお話をありがとうございました。眞邉さんの活動は、未来を繋ぐバトンとして、戦争のない未来を想定されていました。戦争があっては、誇れる文化もなにも、バトン出来ません。かがやかしい未来を見つめながら走っている眞邉さんのお話は、イノベーティブで、きらきらと輝く未来を想像させてくださいました。眞邉さんのもつバトンが、日本の誇れる文化「UMAMI」そのものではないでしょうか。

天青のお食事 丸眞さんのお出汁を使ったお料理は、素材の味を引き立てつつ、主張はしないのに複雑な味を舌に載せてくださいます。これがUMAMIの相乗効果!是非「天青」のお食事を味わってみてください。

okeba村石(え)

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