特別教室110 相原 海「地域循環型の養豚をめざす」レポート

講師 相原海(こぶた畑 代表)

会場 旧三福

日程 2022/05/22 15:00-17:00

5月の特別教室は小田原の旧三福にて、南足柄で養豚場を営む「こぶた畑」代表の相原 海 さんをお迎えして開催しました。

畜産業界の現状や、相原さんが追求する「地域循環型」の養豚のことなど、濃厚かつオープンにお話しいただきました!

こぶた畑は相原さんが運営されている小規模な農場。

国内の養豚場は時代とともに大規模化しており、現在では年間2,000~3,000頭ほど出荷する大量生産型の養豚場が主流です(海外では20,000頭規模の養豚場も多くあるのだとか…)。対してこぶた畑の年間の出荷数は30~50頭と現在の畜産業界ではマイノリティにあたります。

ゆったりした牧場で親子の豚が和やかに過ごす

ただ単に規模が小さいというだけでなく、飼育環境や飼料も一般的な養豚場とはまるで違います。

近代化された養豚では輸入穀物を大量消費することが問題とされていますが、こぶた畑が飼料として与えているのは、近隣地域から出るパンの耳や規格外のかまぼこ、麺くずなどを発酵させたもの。豚舎は開放的で広く、また母豚の妊娠・出産スパンはゆったり取り、一般には生後半年ほどで出荷されるところを相原さんの豚たちは10ヶ月程の時間をかけて育っていきます。そして豚肉は南足柄や小田原など近隣地域の顧客の定期購入という形で消費されます。

これは現代の大量生産、大量消費にあわせたやり方とは異なる、有機物循環を基礎にした畜産のあり方です。経済的合理性には欠いていると言えるかもしれませんが、長い歴史のなかではごくスタンダードだった、環境にも豚にも無理のない養豚。これこそが相原さんが目指している形です。

“僕は畜産農家だけど、ベジタリアンが批判する現代の畜産の問題点は概ね合意出来ます。でも、それが畜産の本質だと言われると、『いえいえ、この100年、たまたま資源浪費型の形態にはまってしまっているだけで、8000年の畜産の歴史は、全く別の営みだったのですよ』とお伝えしたくなるのです。”と相原さん。

人間が家畜を食べることそのものは本来自然なことのはず。反して生産の過程が歪になってきた現代で、畜産のあり方もそろそろ見つめ直すべきときなんじゃないかと感じました。

動物と人間の命、未来の地球を考えたとき、こぶた畑の目指す昔ながらの「地域循環型」の畜産や農業は一周回って最先端になるのかもしれません。

相原さんは柔らかい雰囲気のなかに信念を感じる方でした。
相原さんは柔らかい雰囲気のなかに信念を感じる人でした。

[暮らしの教室から 3つの質問]
■相原さんのターニングポイント
地域循環型の養鶏をする師匠に出会えたこと

■幸せのモノサシ
豚が地域のクズものを肉に変えて生きていってくれることに魅力を感じる。同じ育てるなら楽しく豚を育てていきたい。

■これから望む社会
効率重視の現代の畜産業界だが、また違う尺度の楽しい畜産の価値観が広まってほしい。

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相原海(こぶた畑 代表)
2002年から南足柄市にて養豚を始めた。豚の飼育から精肉の販売までを手掛けている。将来の職業を模索する中、本来「産業廃棄物」として扱われる糠やおからといった素材を動物の餌に用いている養鶏場の取り組みや、地面に木くずを敷き糞尿をたい肥化する養豚場の飼育法等に面白さや可能性を感じ、自らも畜産を始めることにした。
[プロフィールはタウンニュース(株)より引用]

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